開業資金のために選んだ“つなぎ”のつもりの仕事
地元に戻ってからの最初の目的は、とにかく開業資金を貯めること。
正直、そのときは「スーパーのレジ打ちでもして、コツコツ貯めればいいかな〜」くらいにしか考えていませんでした(笑)。
鍼灸院を開業するまでの“つなぎ”の仕事、という感じで、そこまでこだわりはなかったんです。
でも、家族や友達からは「せっかくなら他にも何かないと?」と地味にツッコまれ続け…。
そこでふと、家にあったお気に入りブランドのショッパー(紙袋)を見て、「あ、ここ受けてみようかな」と軽いノリで美容業界に飛び込むことにしました。
ショッパーを見て飛び込んだまさかの美容業界
そのブランドは、主にボディケア系がメイン。
本格的なメイクスキルもいらないし、「これなら私でもできるかも?」と軽い気持ちで応募してみたところ…まさかの採用(笑)。
元々、プライベートでも愛用していたブランドだったので、「まさか自分がここで商品を販売する側になるなんて!」と驚きとワクワクが入り混じった気持ちでした。
さらに勤務先は百貨店。
敷居が高いイメージはあったものの、その分、他ブランドのスタッフさんたちの立ち振る舞いや言葉遣いがとてもきれいで、同じフロアで働けること自体が刺激的でした。
「こういう場所で働くの、意外と好きかも」と思えるくらい、毎日が新鮮で楽しかったのを覚えています。
百貨店という学びのステージで身についた所作と言葉遣い
百貨店での接客は、ただ商品を売るだけではありません。
- 立ち姿勢
- お辞儀の角度
- 呼びかけ方や言葉選び
- お見送りのタイミング
こうした細かい所作ひとつひとつが、お客様に与える印象を大きく左右します。
周りの先輩や他ブランドのスタッフさんもさすがだなと思わされることばかりでした
ここで養われた「丁寧さ」や「言葉の選び方」は、今振り返ると鍼灸整体院でのカウンセリングや説明にも直結しています。
同じことを言うにしても、どう伝えるかで安心感が全然違う、ということを体で学んだ期間でした。
ギフト提案で鍛えられた「聞く力」と「想像する力」
私がいたブランドは、ギフト需要がとても多いお店でした。
そのため、「自分用にボディクリームを買いに来ました」というお客様だけでなく、
- 友達への誕生日プレゼント
- 結婚祝い
- 仕事の送別品
など、さまざまなシーンでのギフト相談を受けることが多かったんです。
ここで大事だったのが、マニュアル的に「人気No.1だからオススメです!」と言うことではなく、
- 贈る相手の年齢
- ライフスタイル(仕事・子育て・趣味など)
- 好きそうな香りやテクスチャー
- 予算感
こうした情報をさりげなく会話の中から聞き出し、「この方が本当に喜ぶのは何か?」を想像して提案すること。
これはまさに、鍼灸で問診をして症状の背景を読み取る作業ととても似ていて、「人の話を聞きながら、求めているものを汲み取る力」が自然と鍛えられていきました。
お客様の一言がくれた自信と、鍼灸の仕事へのつながり
提案した商品を前に、お客様から
「たしかに、その人にはこういう香りが合いそうですね」
「その組み合わせ、すごく喜んでくれそう!」
といった言葉をいただけると、「ちゃんと想像できていたんだ」と自信につながりました。
お買い物後に
「アドバイスしてもらえて助かりました」
「一緒に選んでもらえて心強かったです」
と言われる瞬間は、ただ“物を売った”というより、“気持ちも含めて届けられた”ような感覚。
その結果、最初の予算より少し高いセットでも「それでお願いします」と選んでいただけることも多く、「心から納得して選ぶと、価格より価値を優先してもらえるんだ」と実感しました。
この経験は、今の鍼灸整体院での提案にもそのまま活きています。
相手の懐を考えすぎずに「本当に良いと思う選択肢」を提案する勇気。あの百貨店での日々が、接客対応とコミュニケーション能力の土台を作ってくれた、大切な時間でした。

